政宗が用意した洋服を着るのも慣れた頃だった。
彼が今現在拠点としているのは陽気な町の、少し古びた一軒家だ。
町の喧騒からは少し離れて建つその家は、元々教会という静かな場所で暮らしていた小十郎にとって住み心地が良かった。
クローゼットを整理していて、それを見つけた。
「・・・・・・?」
クローゼットの奥に隠されるようにして置かれていた桐箱。
何だろうと、何の気はなしに取り上げて中身を取り出してみた。
びらり、と出てきたのは面白い形の洋服だった。
一枚布で出来た其れは青地に細かな文様が刺繍されている。それと一緒に長くて硬い布地や紐、派手な刺繍は施されていないが銀糸で控えめに刺繍が施された先程のものと同型のものや、靴下とは形が違うが…恐らく、足に履くと思われるものもあった。
「…重い」
綺麗なものだが、見た目以上に重かった。今着ているものの比ではない。
それでも袖を通すような所があるので、これも服なのであろう。
「Heyこじゅ――」
それらを前に首を捻っていると陽気に顔を出した政宗が、小十郎の姿を見てぎょっとしたように目を見開いた。
「あ。政宗様」
彼の隷属となってから小十郎は政宗をそう呼ぶようにしていた。
「…どうした、それ」
「綺麗で不思議な形だったので思わず見入ってしまったのですが…いけませんでしたか?」
広げられた変わった洋服と小十郎とを交互に見比べ、政宗は漸く言葉を紡いだ。
「いや…別に誰も着ないんだが、なんとなく気に入ったから大分昔に買ったヤツだし…」
そこまで言って、何かを思いついたように政宗の顔が明るくなった。
「小十郎、着るか?」
別にいいですよ、と言ってしまったのがまずかった。
終
何故殿が着付けできるかと言うと…祖は西洋だけど祖先が日本に住み着いて暫く(ン十年位)日本暮らしだったから。
因みに小十郎は日本から移住してきた両親が西洋で生んだ日本人。両親事故で亡くしてそのまま現地の孤児院→教会と引き取られました。
(どうでもいい裏設定)
うっわ、マジ眠い…orz
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