「例の鬼がわざわざウチまで来て滂沱の涙流すのが正直ウザイ」
珍しく尋ねてきた政宗が開口一番にそう言った。
「…それが我と何の関係がある」
「あるさ。話す内容はAllお前」
惚気も他所でやれってんだと吐き捨ててぐいと茶を飲み干した政宗に元就は隠すことなくしかめっ面をして見せた。
「奴が我の事を貴様に何ぞ言うかは気にならぬが非常に腹立たしい。しかしそれは奴が勝手にやっているだけであって我が頼んだ訳でもない。よって、関係ない」
「…お前って前々から思ってたが生き難い野郎だな」
うえー、と渋面を浮かべて頬杖を付いた政宗ははぁ、と嘆息した。
「ンな嫌ならさっさと絶縁宣言でもしりゃいいだろうが。事あるごとにこっちに愚痴言いに来るから毎回の旅費に奴の家臣が泣いてたんだよ」
「…旅費?」
「Yes.お前と会った後は大概こっち来るぞ。見限るなら早いうちがいいぜ」
まぁできねぇだろうがな、と相手には聞こえないようにコソリと呟いて。
相変わらずの鉄面皮に不機嫌な様子が微かに加わったのを政宗は見逃さなかった。
「嫌ってるんならはっきりそう言ってやりゃいいんだよ。そうすりゃこっちも毎回愚痴聞かなくて済むし奴の家臣も不必要な旅費が減って喜ぶってモンだ」
トドメ、とばかりにまくし立てれば元就は不機嫌そうにふん、と鼻を鳴らした。
「嫌う手間すら惜しい」
呟いて、こちらを一睨み。
「それに貴様の言に従うのは癪に障る」
「あー、そ」
要は嫌ってはいない訳だ。
天邪鬼も此処まで来ると呆れる…っていうか、ウザイ。
「なら奴に言っとけよ」
もう関わるのが面倒だったので適当に答えて、茶請けの煎餅を噛み砕いた。
後日『元就がお前の所行くなって拗ねてた!!』と言うやたらとうざったい文が届き、その場で破り捨ててやった。
終
恋のエンジェル・伊達。(嫌)
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