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年年歳歳花相似たり 歳歳年年人同じからず

適当に日々を書きます。拍手やメルフォレス、小ネタや日記御題なんかも。

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薬屋パロ・第四幕

綱元がふん捕まえた自称妖怪の情報をまとめると、こうだ。


・どうやら妖精の一種
・主に海向こうの島国に生息
・育っても一尺(約30.3センチ)程度
・言葉で人を惑わす性質がある
・育てば話せるし人型も取れる
・栄養を溜め、暫らくしたら百年ほど冬眠する

以上が小十郎の情報だ。次に奴の肉の効果についてまとめると……

・人間としての死後、どんな妖怪になるからランダム
・すぐに人型を取れるヤツも居れば小十郎の様に長い時間が掛かる者もいる。
・人間としての死が首を取られると言ったような、生命活動が困難な状態で訪れた場合、妖怪として生まれ変わる事はない
・しかし失血死や服毒死程度ならば生まれ変わることは可能。心臓を取られたり胴体から首が離れると言った事以外ならば大概平気らしい
・寿命は人間の数倍~であり、かなり長く生きる

――まぁ、こんな感じだ。
あれから真田や毛利などに事の顛末を記した手紙を送り、十分に説明はした。
大坂の陣で真田主従が死亡したが遺体が出ていないしその後、何の音沙汰もないので奴等が生きているかは分からない。
長曾我部と毛利はまだしぶとく生きている。寿命が来たら清にでも渡ると言っていた。
前田は……まだぴんぴんしているがこれも寿命が来たら世界漫遊をすると言っていた。
綱元達はそろそろ眠りに着く様子の小十郎を見守るため、山深くに小さな庵を建てた。まぁ、百年くらいは大丈夫だろう。
俺も小十郎と共に居ようと思ったが……それも少し厳しかった。

先日、江戸で大往生した。
意識が遠退き、次に目が覚めた時には十八、九位に若返っていた。どうやら、ケモノにはならないらしい。
それでも何となく……漠然と自分の本性は判った。なかなか偉大なものになったものだ。洒落が効いていて面白いと言えば面白い。

――まぁとにかく、この姿を知るものは少ないが、まがりなりともこちらは独眼竜と呼ばれた仙台藩主。独眼を筆頭に面影は色濃く残り、見る者が見れば気付くだろう。
だから、日本には居られなかった。その為、泣く泣く小十郎を綱元達に預け、世界漫遊に旅立つ事にした。


「――と言う訳で小十郎。悪いが俺は日本を出る」


小さな身体を抱き上げてその黒目しかない瞳をじっと見つめて言えば小十郎はぱしぱしと瞬きをした。


「百年経って、俺を知るものが居なくなり、お前が目覚めたらまた一緒にどこかへ出かけよう。こいつは言わば下見の旅だ」


クゥ、と小さく小十郎が泣いた。その瞳は濡れてきらきらと輝いている。何かを訴える目だ。先の世で言うならアレだ、ア●フルだ。
――駄目だ!そんな瞳で見つめられたら折角着いた決心が揺らぐ!


「――綱元!頼んだ!!」


くっ、と視線を逸らし、綱元に小十郎を手渡すと小十郎がその腕の中でじたじたと暴れた。


「あっ、こら。駄目だよ。寝て起きれば直ぐなんだから我慢し――痛!」

「小十郎!」


子供を諭すように優しく語り掛けた綱元だが小十郎はがりりとその身体を拘束した指を噛み、逃れた。
身軽に地面に着地し、俺の足元まで駆け寄ると足にその頭を押しつけてきた。
袴の裾を噛み、嫌だと言うようにうーうー唸る姿にぐらりと付いた筈の決心が揺らぐ。


「小十郎……」

「駄目だってば。もう、殿も行くなら行く!そろそろ出ないと出航に間に合わないでしょ?」

「……ああ」


これから江戸から出る清船に乗り込み、清に行く手筈が付いていた。
後ろ髪を引かれる思いで綱元に小十郎を預け、駆け出した。

みーみーと響く鳴き声に振り向かなかったのは、意地だった。





そんな訳で百年ばかり世界を一人で放浪した。
西洋を中心に回れるだけ回り、数ヶ国語はできるようになったし様々なものも身につけた。
その最たるものは、薬学だ。妖怪の世界の薬はとにかく面白い。惚れ薬やら自白剤やら、面白いものでは皮膚に影響の出ない脱毛剤やら視力を回復するものなど。実に興味深かった。
この百年、ほぼその知識を得る為に費やしていたと言っても過言ではない。お陰で薬学に関する知識は有り余るほどある。


「いっそ店でも開くか……?」


そう笑って、腰を上げた。
久々の日本はこれと言って変わりはなかったが敢えて言えば人間に危機感がなくなったようだ。
泰平の世だから仕方ないと言えば仕方ないか。

密航していた清船から役人の目を掻い潜って下り、粗方離れた所で辺りを見回した。
――出島は異人と日本人で溢れ、活気づいていた。


「――政宗様」


久しく呼ばれなかった名を呼んだ小さな声に反応し、周囲を見回すが……それらしき者は誰も居ない。


「こちらですよ」

「――ぁ」


再度響いた声に漸く出所を突き止めた。

倉庫らしき建物の間に積まれた無数の酒樽。
その隙間から、小さな人間――いや、妖怪がこちらににこやかに手を振っていた。





続。






一気に百年経ちました。
小十郎の仕草にはそれがし全力を注いでいるでござる。
小動物は可愛く、可愛く!!
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